MEMORIES OF THE JOURNEY

PEACE BOAT VOYAGE 122
A 107-Day Journey Around the World 2025.12.14-2026.03.30

 

Vol.66

2026.02.09

あ

「だぁさま、置いていきます。」の巻

さて。
 
前回のラスト「だぁさまが倒れた。」
それでも発表会は、なんとか無事に終了〜
 
からの、続編。
 


 
私の脳内では、すでに別の緊急会議が始まっていた。
 
「明日から予定している、イグアスの滝への離脱旅。行けるのか?」
 
実はこの段階では、まだ諦めていなかった。
意外に図太い、近藤家。
 
だってイグアスの滝は、今回の世界一周における、近藤家最大級のイベント。
2人で、めっちゃんこ楽しみにしていた。
 
船内で高額ギガを何度も課金し、飛行機、ホテル、移動方法、観光ルートを調べまくり、どれだけの時間と気持ちを費やしたことか。
 
簡単に、
「はい、中止ですね」
なんて、ありえない。
 
発表会終了後、告げられた診断結果は、
「奥様、ご主人、インフルエンザ陽性です」
 
その瞬間、私の脳内会議、第二ラウンド。
 
「タミフルをもらって、下船できないか?」
この期に及んでも、まだ諦めていなかった。
 
たぶん、だぁさまも諦めていなかった。
 
イグアス〜〜〜!!
 
……が。
 
ここで、船のルールをご説明しよう。
 
船内でインフルエンザやコロナなどの感染症と診断された場合、即、船内隔離。
寄港地での下船など、もってのほか。
 
ちーん。
 
船内には「隔離部屋」があり、解除されるまでは一歩も外へ出られない。
食事は一日三回、部屋まで運ばれ、必要に応じて問診などが行われる。
 
基本的にはインサイド。
つまり、窓なしのお部屋。
 
そこで、選択を迫られた。
「奥様も一緒に隔離されますか?それとも、ご主人だけ隔離されますか?」
 
夫婦一緒に隔離する場合は、私たちの客室が、そのまま隔離部屋になるらしい。
 
近藤家の部屋はアウトサイドなので、窓あり。
ただし、二人そろって一歩も出られない。
 
ここにきてようやく、
ほんまにイグアス、行かれへんのかも…
と、うすうす気づき始める。
 
遅い(笑)。
 
二人それぞれ、脳みそをフル回転させる。
無言で、にらめっこ。
 
先に口火を切ったのは、だぁさまだった。
 
「ちぃ、ひとりでイグアス行ってこい!
一緒に行かれへんで、ごめんな〜」
 
私は、秒で答えた。
 
「そうする〜」
 
……すみません。
 
軽い。
軽いけれど、この軽さで前へ進まないと、全部が止まるやつ。
 
ひとつだけ、最後の望みをかけて聞いてみた。
 
「私は6日間、離脱して船におりませんので、彼の隔離は、自分たちの部屋でお願いできませんか?」
「いえ、お二人そろってでなければ、無理です」
 
ひと言で、はい終了。
絶対に融通が利かない。
 
まぁ想定内。
これが、PEACEBOAT。船ルール。
 
かくして、だぁさまは窓なしの隔離部屋へ。
私は突然ひとりで、5泊6日のイグアス離脱旅へ挑戦することになった。
 


 
ただいまの時刻、午後5時。
明日の朝、ブエノスアイレス寄港。船を降りる。
 
ここからは、完全なる段取り勝負。
 
そこへ来た、最初の試練。
「では、お部屋を消毒しますね。今から2時間、入れませんので〜」
 
え。
まずい。
 
これでは、何もできない。
 
「パソコンと携帯だけ取らせてください〜!」
スタッフに懇願。
 
「どうなっても知りませんよ」
そう言い残すスタッフをよそに、消毒して間もない部屋へ突入した。
 
必要なものだけを抱え、すぐに退室。
たぶん、滞在時間は1分ほど。
 
これが、まあ強烈。
 
呼吸困難になるかと思った。
目も痛い。失明するかと思った。
 
消毒って、こんな感じなんだね〜。
いや〜、すごい経験。
 


 
さて、気を取り直し、
共有スペースに陣取って、パソコンに向かう。
 
まずは、だぁさま分のキャンセル手続き。
 
確認すると、戻ってきたのは、
航空券、片道約2,000円。
切ない〜〜〜〜。
 
ホテルは、ひとまずそのままにしておくことにした。
なぜなら、ひらめいたのだ。
 
プエルトマドリンで出会った、ステキ女子・亜呼ちゃん。
 
そういえば、
「ひとりでイグアスへ行く」
と言っていたではないか。
 
人づてに、人づてをたどり、
一度しか会ったことのない亜呼ちゃんに、なんとか到達。
 
「これこれこういう事情で、もしよかったら、ホテルをご一緒しませんか?」
 
亜呼ちゃんにとっても、宿泊費が節約できる。
私にとっても、一人きりではなくなる。
ウィンウィン。
 
亜呼ちゃんは、気前よくOKしてくれた。
「予定が重なるところがあったら、ぜひ一緒に行きましょう〜!」
 
ありがと〜〜!
頼りの綱、一本目を確保。
 
さらに、
「明日から自力でイグアスへ離脱するメンバーが、8階で打ち合わせをしている」
という情報を入手。
 
これは行くしかない。
 
その場に乱入成功。
耳をダンボにする⋯
 
すると、同じ時間帯の飛行機に乗り、似たようなルートをたどるグループを発見した。
 
そろ〜り、そろ〜りと近づく私。
 
「これこれこういう事情で……くっついて行ってもいいですか?」
イズさんチームも、気前よくOKしてくださった。
 
心強い〜〜!
ありがとうございます!
 
頼りの綱、二本目を確保。
 
とはいえ、旅の計画を立てたのは自分。
ミスがあれば、自分で回収するしかない。
 
いつもなら、
パスポートと現金の管理は、だぁさま。
荷造り、各種検索、旅程管理、航空券などの予約確認は、私。
なんとなく自然に分担していた。
 
ところが今回は⋯
 
パスポートも私。
現金も私。
荷物も私。
移動の手配も私。
迷子になるのも、たぶん私。
 
全部ひとり。
抜けは許されない。
 
確認して、確認して、もう一度確認。
頭の中で、翌日の移動を何度もシミュレーションする。
 


 
一方、だぁさまの隔離部屋も決まり、移動が終わったらしい。
 
私がいない6日間、隔離生活で困らないように、必要物資をそろえる。
 
心臓の薬。
充電セット。
柿ピー。
ポカリスエットの粉末。
老眼鏡。
その他もろもろ。
 
そして、
熊の手……一般的には、孫の手というのか?w
 

 
ここ最重要w。
 
全部をバケツにまとめ、だぁさまの隔離部屋へGo!
 
監視の目を避けて潜入。
 
「ありがとう〜〜〜」
荷物を渡して、ミッション完了。
 
*あとで気づく。歯ブラシセット忘れた⋯(笑)
 

 
そこから、ようやく自分の荷造り。
5泊6日分。
 
気づけば、深夜0時を回っていた。
 
まだまだ確認したいことはある。
 
けれど、
「私の体力も大事」
と脳内で自分に言い聞かせ、いったん寝ることにした。
 
えらい。
 
そして布団に入り、目を閉じた瞬間。
気づいた。
 
ひとつ忘れている。
だぁさまの離脱申請の取り消し。
 
しまった。
 
まあ、仕方ない。
明日の朝、フロントへ行こう。
 


 
そして翌朝、目が覚める。
 
昨日の出来事は、夢か幻か……。
いや、現実だった。
 
まずはフロントへ行き、離脱申請の取り消しの件について、事情を説明した。
 
すると、フロントガールが、実にドラスティックに言った。
「前日まででしたら2万円ですが、当日なので3万円です」
 
なんと。
 
離脱するための申請に3万円。
離脱を取り消すためにも3万円。
 
行かないのに、合計6万円。
 
船が隔離を決めたのだから、船内で情報を共有して、うまいこと処理してくれてもいいよね〜。
と、乗客としては思う。
 
しかし、それがルール。
 
パスポートが絡む手続きは、とにかくシビア。
というか、徹底してマニュアル通り。
 
きっと向こうにしてみれば、
「これ以上、仕事を増やしてくれるな〜」
ってところか。
 
わかるけどー。
 


 
いよいよ、出発の時間が迫ってきた。
 
荷物、パスポート、航空券。
ひとつずつ、最後の確認をしていく。
 
最後に、もう一度、監視の目を避けて、だぁさまの隔離部屋へ潜入。
 
「具合はどう?」
「お熱〜〜〜〜」
 
インフルエンザのヤツらも、一通りのお仕事はこなしているっぽい。
 
タミフルよ、しっかりしろ。
負けるな(笑)。
 
「行ってくるよ!」
「行ってらっしゃい!気ぃつけて!」
 
だぁさまも、いざというときは男前。
こういうとき、迷わず背中を押してくれる。
 
絶大なる信頼。
ありがとう。
 
いやしかしー
まさか、二人で楽しみにしていたイグアスへ、
私ひとりで向かうことになるとは。
 
背中には、15キロのリュック。
胸には、不安と緊張。
手には、パスポート。
 
そして心には、
行かないのに消えた6万円〜〜〜〜〜〜〜〜!
 
こうして始まる、初めてのひとり離脱旅。
イグアスの滝、5泊6日。
 
だぁさまも、初めてのひとり隔離旅。
窓なし監禁部屋、5泊6日。
 
それぞれの旅へ。
出発進行!
 
……どうなりますことやら。
珍道中に、乞うご期待!
 
🌀To Be Continued🌀

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