あ
さて。
前回のラスト「だぁさまが倒れた。」
それでも発表会は、なんとか無事に終了〜
からの、続編。
私の脳内では、すでに別の緊急会議が始まっていた。
「明日から予定している、イグアスの滝への離脱旅。行けるのか?」
実はこの段階では、まだ諦めていなかった。
意外に図太い、近藤家。
だってイグアスの滝は、今回の世界一周における、近藤家最大級のイベント。
2人で、めっちゃんこ楽しみにしていた。
船内で高額ギガを何度も課金し、飛行機、ホテル、移動方法、観光ルートを調べまくり、どれだけの時間と気持ちを費やしたことか。
簡単に、
「はい、中止ですね」
なんて、ありえない。
発表会終了後、告げられた診断結果は、
「奥様、ご主人、インフルエンザ陽性です」
その瞬間、私の脳内会議、第二ラウンド。
「タミフルをもらって、下船できないか?」
この期に及んでも、まだ諦めていなかった。
たぶん、だぁさまも諦めていなかった。
イグアス〜〜〜!!
……が。
ここで、船のルールをご説明しよう。
船内でインフルエンザやコロナなどの感染症と診断された場合、即、船内隔離。
寄港地での下船など、もってのほか。
ちーん。
船内には「隔離部屋」があり、解除されるまでは一歩も外へ出られない。
食事は一日三回、部屋まで運ばれ、必要に応じて問診などが行われる。
基本的にはインサイド。
つまり、窓なしのお部屋。
そこで、選択を迫られた。
「奥様も一緒に隔離されますか?それとも、ご主人だけ隔離されますか?」
夫婦一緒に隔離する場合は、私たちの客室が、そのまま隔離部屋になるらしい。
近藤家の部屋はアウトサイドなので、窓あり。
ただし、二人そろって一歩も出られない。
ここにきてようやく、
ほんまにイグアス、行かれへんのかも…
と、うすうす気づき始める。
遅い(笑)。
二人それぞれ、脳みそをフル回転させる。
無言で、にらめっこ。
先に口火を切ったのは、だぁさまだった。
「ちぃ、ひとりでイグアス行ってこい!
一緒に行かれへんで、ごめんな〜」
私は、秒で答えた。
「そうする〜」
……すみません。
軽い。
軽いけれど、この軽さで前へ進まないと、全部が止まるやつ。
ひとつだけ、最後の望みをかけて聞いてみた。
「私は6日間、離脱して船におりませんので、彼の隔離は、自分たちの部屋でお願いできませんか?」
「いえ、お二人そろってでなければ、無理です」
ひと言で、はい終了。
絶対に融通が利かない。
まぁ想定内。
これが、PEACEBOAT。船ルール。
かくして、だぁさまは窓なしの隔離部屋へ。
私は突然ひとりで、5泊6日のイグアス離脱旅へ挑戦することになった。
ただいまの時刻、午後5時。
明日の朝、ブエノスアイレス寄港。船を降りる。
ここからは、完全なる段取り勝負。
そこへ来た、最初の試練。
「では、お部屋を消毒しますね。今から2時間、入れませんので〜」
え。
まずい。
これでは、何もできない。
「パソコンと携帯だけ取らせてください〜!」
スタッフに懇願。
「どうなっても知りませんよ」
そう言い残すスタッフをよそに、消毒して間もない部屋へ突入した。
必要なものだけを抱え、すぐに退室。
たぶん、滞在時間は1分ほど。
これが、まあ強烈。
呼吸困難になるかと思った。
目も痛い。失明するかと思った。
消毒って、こんな感じなんだね〜。
いや〜、すごい経験。
さて、気を取り直し、
共有スペースに陣取って、パソコンに向かう。
まずは、だぁさま分のキャンセル手続き。
確認すると、戻ってきたのは、
航空券、片道約2,000円。
切ない〜〜〜〜。
ホテルは、ひとまずそのままにしておくことにした。
なぜなら、ひらめいたのだ。
プエルトマドリンで出会った、ステキ女子・亜呼ちゃん。
そういえば、
「ひとりでイグアスへ行く」
と言っていたではないか。
人づてに、人づてをたどり、
一度しか会ったことのない亜呼ちゃんに、なんとか到達。
「これこれこういう事情で、もしよかったら、ホテルをご一緒しませんか?」
亜呼ちゃんにとっても、宿泊費が節約できる。
私にとっても、一人きりではなくなる。
ウィンウィン。
亜呼ちゃんは、気前よくOKしてくれた。
「予定が重なるところがあったら、ぜひ一緒に行きましょう〜!」
ありがと〜〜!
頼りの綱、一本目を確保。
さらに、
「明日から自力でイグアスへ離脱するメンバーが、8階で打ち合わせをしている」
という情報を入手。
これは行くしかない。
その場に乱入成功。
耳をダンボにする⋯
すると、同じ時間帯の飛行機に乗り、似たようなルートをたどるグループを発見した。
そろ〜り、そろ〜りと近づく私。
「これこれこういう事情で……くっついて行ってもいいですか?」
イズさんチームも、気前よくOKしてくださった。
心強い〜〜!
ありがとうございます!
頼りの綱、二本目を確保。
とはいえ、旅の計画を立てたのは自分。
ミスがあれば、自分で回収するしかない。
いつもなら、
パスポートと現金の管理は、だぁさま。
荷造り、各種検索、旅程管理、航空券などの予約確認は、私。
なんとなく自然に分担していた。
ところが今回は⋯
パスポートも私。
現金も私。
荷物も私。
移動の手配も私。
迷子になるのも、たぶん私。
全部ひとり。
抜けは許されない。
確認して、確認して、もう一度確認。
頭の中で、翌日の移動を何度もシミュレーションする。
一方、だぁさまの隔離部屋も決まり、移動が終わったらしい。
私がいない6日間、隔離生活で困らないように、必要物資をそろえる。
心臓の薬。
充電セット。
柿ピー。
ポカリスエットの粉末。
老眼鏡。
その他もろもろ。
そして、
熊の手……一般的には、孫の手というのか?w
ここ最重要w。
全部をバケツにまとめ、だぁさまの隔離部屋へGo!
監視の目を避けて潜入。
「ありがとう〜〜〜」
荷物を渡して、ミッション完了。
*あとで気づく。歯ブラシセット忘れた⋯(笑)
そこから、ようやく自分の荷造り。
5泊6日分。
気づけば、深夜0時を回っていた。
まだまだ確認したいことはある。
けれど、
「私の体力も大事」
と脳内で自分に言い聞かせ、いったん寝ることにした。
えらい。
そして布団に入り、目を閉じた瞬間。
気づいた。
ひとつ忘れている。
だぁさまの離脱申請の取り消し。
しまった。
まあ、仕方ない。
明日の朝、フロントへ行こう。
そして翌朝、目が覚める。
昨日の出来事は、夢か幻か……。
いや、現実だった。
まずはフロントへ行き、離脱申請の取り消しの件について、事情を説明した。
すると、フロントガールが、実にドラスティックに言った。
「前日まででしたら2万円ですが、当日なので3万円です」
なんと。
離脱するための申請に3万円。
離脱を取り消すためにも3万円。
行かないのに、合計6万円。
船が隔離を決めたのだから、船内で情報を共有して、うまいこと処理してくれてもいいよね〜。
と、乗客としては思う。
しかし、それがルール。
パスポートが絡む手続きは、とにかくシビア。
というか、徹底してマニュアル通り。
きっと向こうにしてみれば、
「これ以上、仕事を増やしてくれるな〜」
ってところか。
わかるけどー。
いよいよ、出発の時間が迫ってきた。
荷物、パスポート、航空券。
ひとつずつ、最後の確認をしていく。
最後に、もう一度、監視の目を避けて、だぁさまの隔離部屋へ潜入。
「具合はどう?」
「お熱〜〜〜〜」
インフルエンザのヤツらも、一通りのお仕事はこなしているっぽい。
タミフルよ、しっかりしろ。
負けるな(笑)。
「行ってくるよ!」
「行ってらっしゃい!気ぃつけて!」
だぁさまも、いざというときは男前。
こういうとき、迷わず背中を押してくれる。
絶大なる信頼。
ありがとう。
いやしかしー
まさか、二人で楽しみにしていたイグアスへ、
私ひとりで向かうことになるとは。
背中には、15キロのリュック。
胸には、不安と緊張。
手には、パスポート。
そして心には、
行かないのに消えた6万円〜〜〜〜〜〜〜〜!
こうして始まる、初めてのひとり離脱旅。
イグアスの滝、5泊6日。
だぁさまも、初めてのひとり隔離旅。
窓なし監禁部屋、5泊6日。
それぞれの旅へ。
出発進行!
……どうなりますことやら。
珍道中に、乞うご期待!
🌀To Be Continued🌀